イランでのウクライナ機撃墜を受けてIFF(敵味方識別装置)について調べてみた
国際空港の側で敵機どころか民間機もわからんで撃墜するとか、クビの上に着いてるのは帽子掛けか、ちゃんと識別はできなかったのか? と言う疑問点から出発し、そういえば敵味方識別装置については以前から気になってたけどまとめたことはなかったな、と思い英Wikipediaを参考に呟いた内容をまとめる。
出典が英Wikipediaかよ、と言う人はもっといいソースで調べてわかりやすくまとめてくれて良いんですよ。お願いします。
さて、IFF (敵味方識別装置、Identification Friend or Foe) である。劇場版バトレイバー2のワンシーンを思い出す人も多いだろう。システムは第二次世界大戦時のイギリスにまでさかのぼる。そこら辺の古い話はせず、現用のMark XIIのみに絞る。なおMark XIIの前は1950年代に開発されたMark Xで、パト2でもでてきたSIF (Selective Identification Feature) と言う単語もその頃から使われるようになった。
さてさて、敵味方識別装置と言っても、基本的に民間の航空管制用のSSR(二次レーダ、Secondary Surveillance Radar)と同様である。レーダから送信を行い、機体の反射波だけで機影を補足する一次レーダとは違い、レーダ側からは問い合わせを行い、相手に応答させるのが二次レーダである。この場合IFFインテロゲータから1030MHzの質問電波を出し、IFFトランスポンダが1090MHzの応答電波を出す。
近年使われている軍民共用モード3であれば3回送るパルスの間隔で、さらに質問電波のタイプをAからDに区別する…が、使われているのはAとCだけだ。パルス1とパルス3の間隔が8マイクロ秒ならモードA、21マイクロ秒ならモードCとなる。
モードAが機体を識別する8進数4桁*1のスコークコード*2を問い合わせ、モードCが気圧高度計の値を100ft単位で問い合わせる。トランスポンダは問い合わせに対し、自動的に回答する。
このモード3、前述の通りトランスポンダは自動的に質問電波に必ず答えるので、軍用機では発信位置から三角測量で敵に位置がバレてしまうため困る。よって軍用のモード4では、モード3/Aと同じような問い合わせを暗号化して行い、トランスポンダは予めセットされたコードと一致を確認してから、さらに位置を分りにくくするため遅延させて応答電波を出す、らしい。このモード4や、後述のモード5の暗号のセットに使うのがKIV-77やKIV-78 IFF暗号化アップリケ、なる謎の機械である。パンフレットなどはあるが、中身は当然最高機密のカタマリのようだ。
さて、さすがにスコークと高度だけでは足りないので、軍民共用モードSが1980年代に追加された。高度なパルス送信技術で色んなデータを送る…らしいのだが複雑なので詳細は省く。このシステムが空中衝突防止装置(TCAS)やADS-Bにも使われてる。さらにこのモードSを暗号化したものが軍用モード5である。米軍では2020年、つまり今年から本格的にモード5の運用を行うため、自衛隊やNATO各国もそれに合わせてモード5対応のトランスポンダの導入が進んでいる。
モード1と2は古い規格のようで、モード1はコクピットで設定する2桁5ビットのミッションコード*3で、モード2は基本的に飛行前に設定する機上変更不可の8進数4桁の機体番号だ。輸送機などでは機上で変更できることもあるとのこと。
だいたい調べたところではこんなところである。最期にF-2に搭載されているAN/APX-113(V) IFF質問・応答装置のカタログと、KIV-78 暗号化アップリケのカタログへのリンク、参考にしたWikipediaの記事を張っておく。
AN/APX-113(V) :
https://www.baesystems.com/en/download-en/20180518191818/1434555677018.pdf
KIV-78:
Identification friend or foe - Wikipedia
Aviation transponder interrogation modes - Wikipedia
Secondary surveillance radar - Wikipedia
米空軍国立博物館:
McDonnell Douglas F-15A Eagle > National Museum of the United States Air Force™ > Display